2006.05.04 (木)

『陰日向に咲く』は二度おいしい

ちょっと前に話題になっていた劇団ひとり著作の『陰日向に咲く』を読んでみました。こりゃ評判になるのもわかりますね。絶対素人とは思えません。よく書けてる。

5つの短編からなる作品ですがちょっとした特徴があります。それぞれが独立したストーリーを持ちながらも、登場人物が微妙に重なってます。各短編のどこかに他の短編の主要な登場人物がちらりと出てくるんです。主人公とすれ違ってたり、なんらかの人間関係があったり。最初は何気なく読み過ごしてたんですが、あれ、こんな人が前の話のどこかに出てきてなかったかと気づきます。すると実はそんなシーンがたくさん散りばめられていることがわかります。次はあの人の正体がわかるかななんて期待しながら読み進めてしまいます。一度では見落としてしまうところもあるでしょう。二度三度と読み返すと、錯綜する人生を解きほぐすかのように各人物の間に絡み合った糸が見えてきて楽しいんじゃないでしょうか。

映像とは違う文章ならではのテクニックも使っています。敢えて描写しないことで読者に勝手な想像をさせておいて、後になって読者の思い込みを裏切るような設定をそ知らぬ顔で明かします。暗黙の前提として思い込むように誘導しておいて、それを覆すことで意外性を感じさせているわけです。筒井康隆がよく使うテクニックでもありますね。

次回作が楽しみな作家になってしまいました。

陰日向に咲く
劇団ひとり


幻冬舎 (2006/01)
¥ 1,470
ISBN: 4344011023
   

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