2007.05.03 (木)

軌道離脱

『軌道離脱』というSF小説を読みました。この本は全体の2/5を過ぎたあたりで俄然面白くなります。そこからこの物語のもっとも重要な部分が動き出すからです。それまでは宇宙旅行に当選したものの事故に遭って絶望的な状況に陥るという孤独で退屈な物語に過ぎません。それが一気に全地球を巻き込む大きな話へと急速に拡がっていくのです。

数日後に自分が死ぬとわかったら人はどういう行動を取るでしょうか。死後の自分が発見されるのは数十年以上先だとしたら。主人公はその時の気持ちを後世の人に伝えるために回想録を書き始めます。ところがそれは全世界の人にリアルタイムで伝わって読まれてしまうのです。死を目前に覚悟した主人公の想いが、キーボードをタイプする指遣いを感じられるほどの生々しさで伝播していきます。ドラマでも映画でもない真実の魂が人々の心を捉えます。一言ひとことが大きな重みを持って受け止められ、たいへんな影響力を発揮します。

この設定が非常に面白くて、途中からはぐいぐい引き込まれました。自分に置き換えて考えると、いったいどんなことを書くんだろうなんて想像しちゃいます。はたして誰に何を伝えたくなるでしょうか。

軌道離脱
ジョン J.ナンス, 菊地 よしみ


早川書房 (2007/01)
¥ 966
ISBN: 4150411352
   

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